KLiS TODAY No.28
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KLiS TODAY No. 28February 2016卒業研究を終えて永井 美咲 学生生活の最後を飾る卒業研究。元々幕末の日本史が好きだった私は、せっかくならば楽しんで研究したいと思い、「多摩地域における幕末維新期の情報網と社会情勢への関心」という題目で幕末維新期の日記史料研究を行いました。 多摩地域は、江戸時代を通して幕府直轄領であり、近藤勇、土方歳三ら新選組を輩出した地域でもあります。多摩地域の人々が当時の混乱する社会情勢についてどのように捉えていたのかを探るため、多摩の日記と他地域の日記から、特に、嘉永6(1853)年以降の異国船来航に関する記述と、慶応4(1868)年の戊辰戦争に関する記述について分析を行いました。多摩の日記から異国船来航と国内外情勢について、支配層から与えられる情報だけではなく、自ら情報を集めていたことが明らかになりました。また、多摩地域近辺でも戦闘が行われた慶応4(1868)年の戊辰戦争では、旧幕府軍から直接に情報を入手していたこと、旧幕府軍の「勝利」を記述していたことなどから、多摩地域の人々の幕領民としての意識と旧幕府側への期待が窺えました。 この研究は、当時の言葉で書かれた数年間にわたる毎日の日記を全て読み解き、内容を理解する作業に特に苦労しました。しかし、時代背景と記述の表現等を照らし合わせることで、幕末維新期を生きた多摩地域の人々の関心や意識を垣間見ることができ、楽しんで研究ができました。また、卒業研究を通して、計画的に作業を進め、先入観に捉われずに粘り強く物事に向き合うことができたことは、今後社会に出るにあたって良い経験となりました。大変なことも多い卒業研究ですが、後輩の皆さんにもぜひ楽しんで取り組んでほしいと思います。(ながい・みさき 知識情報・図書館学類4年次)
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