KLiS TODAY Vol.22
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2KLiS TODAY No. 22February 2014山口 浩基 1月8日に、卒業研究最終発表会がありました。着手発表会、中間発表会に続いて、一年間の研究成果を報告する場です。自分の発表順がやってくる頃には、私の手のひらは汗でびっしょりになっていました。 発表会での私のように、緊張のあまり手に汗を握る経験は、誰にでもあることだと思います。手のひらの発汗量に限らず、ヒトの生理反応と心理状態は密接に関係しており、生理反応を計測することで、当人の心理がどのような状態か推し量ることができます。私は卒業研究として、ヒトが映像を視聴している際の心理状態と、生理反応のひとつである脳波の関係性を調べました。脳波にはα波、β波、θ波など色々な種類があります。例えば、α波はリラックスしているときによく出ている脳波で、逆に何かに集中していたり、精神的な負荷がかかっていたりすると抑制されます。α波の他にも、ヒトの集中度を表す脳波や、脳波の比率が存在します。これらの指標が映像視聴中、どのように変化するのかを調べる実験を行いました。13人の被験者には、自然風景の映像と二つの短編映画を視聴してもらいました。13人中12人の被験者が「面白い」と評した短編映画Aで、集中度と映像のシーンに関係性が見られました。具体的には、映画中で新しい登場人物が現れたり、物語に動きがあったりしたとき、α波,β波,β波/α波の集中度が大きく上昇する傾向が見られました。また映画の起承転結の転に当たるシーンでは、それぞれの集中度に最大の上昇が確認できました。これらの結果から、「集中度の増大が、視聴中に感じた驚きや新鮮さに関係し、増大度合いは感じた驚きや新鮮さの程度を表しているのではないか」と考えられます。その可能性のさらなる検証や、脳波の分析方法の改善、他の生理反応の計測などが今後の課題です。 卒業研究を終えた今、振り返ってみると、結果の一部が予想と違っていたり、データの分析方法を試行錯誤したりと、決して平坦な道のりではなかったように思います。研究でつまずくたび、ときには一人で熟考し、ときには先生と相談して、問題解決に取り組みました。しかし苦労した分、最終発表を終えたときの達成感は相当なものでした。研究領域における知識の量は、一年前、研究テーマさえ曖昧だった頃とは比較になりません。また期限付きの研究を通して、計画的な遂行能力が身についたと実感しています。(やまぐち・こうき 知識情報・図書館学類 4年次)卒業研究を終えて ̶ 知識科学主専攻脳波の種類と映像視聴の集中度の変化
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