筑波大学2018年スクールガイド
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07照山 絢子 助教(知識科学主専攻) レポートを書くために調べ物をする、娯楽のために本や漫画を読む、うれしかったことや悲しかったことを友達にメールする…。多くの人は情報を獲得したり共有したりするためのコミュニケーションを、意識せずにとっています。しかし、そういったことに困難を感じる人もいます。たとえば、視覚障害で文字を読むのに特別な機材が必要な人や、自閉症で人とうまく気持ちを共有できない人、日本語が母語ではないため生活に必要な情報を得られない人等。また、障害や言葉の壁がなくとも、地域や世代、育った環境の違いなどによってコミュニケーションのスタイルはさまざまです。人がどんなふうに情報をやりとりし、他人や社会とつながっているのか、またそれについてどんなことを思い、どんな問題を抱えているのかを明らかにすることは、より良い社会の実現のために必要不可欠なことです。 照山研究室では、学生がそれぞれ自分で決めた場所や地域に出かけていき、そこの人々に時間をかけて寄り添い話を聞くことで、その人々の経験にせまる「フィールドワーク」という調査をおこなっています。学習障害者のグループに出かけていって彼らの読書経験について調査をした学生、商店街の活性化に奮闘する地域で住民たちと時間を過ごした学生、不登校の子どもたちが通う適応指導教室の先生たちの話を聞きにいこうとしている学生など、さまざまな卒業研究に取り組んでいる学生がいます。現場に赴き、そこで暮らす人々の生の声に耳を傾けることで、そこにどんなコミュニケーションが生じていてどんな課題が浮かび上がっているのかを考えていきます。一人で調査をするというのは最初は不安かもしれませんが、ゼミ合宿で聞き取り調査をする等、練習の場も多く設けています。フットワークの軽さと知的好奇心があれば、かけがえのない出会いと学びの経験が得られるものと思います。鈴木 伸崇 准教授(知識情報システム主専攻) 当研究室は、主にWeb上のデータを対象に、データの構造や繋がりに着目して研究を進めています。では、この「データの構造や繋がり」とは何でしょうか。Web上の代表的なデータとしてHTMLやXMLがあります。これらはタグを使ってデータを記述します。タグの入れ子関係に着目すると、このようなデータはツリー構造として表せます。より広い視点で捉えて、個々のWebページを1つの実体(ノード)とみなし、Webページ間に張られているリンクをエッジと考えると、Web自体を1つのグラフとして表せます。ほかにもDBpediaなど,グラフとして表せるデータは数多く存在します.このようなデータのもつ構造はそれ自体が簡潔で美しく、かつ膨大なデータを効率的に扱う上での重要な手がかりとなります。当研究室では、Web上のデータがもつ構造や繋がりに着目し、構造の類似性に着目したデータの検索や分類、大規模グラフデータからの概形抽出、大規模データ上で経路探索を効率よく行うためのアルゴリズムなどについて研究しています。  当研究室は、できるだけ自由な雰囲気の中で研究を進めていけるように心がけています。しかし、自由だからといって研究を怠けてしまうような学生はおらず、自分のペースを保ちながらも真摯かつ着実に研究を進めています。若い人の集中力には目を見張るものがあり、私の予想を大きく超える成果が得られることも珍しくありません。研究活動を通じて、微力ながら若い人たちの可能性を伸ばすお手伝いができればと考えています。 研究が面白いのは、未解決の問題に対して自分で解を見つけるところです。卒業研究では未解決の研究テーマに取り組みますので、その過程では多くの未知の問題に遭遇します。その問題の解決を通じて培った問題解決能力は、実社会でも必ず役に立つものと思います。意欲ある方々のご参加を心からお待ちしています。呑海 沙織 教授(情報資源経営主専攻) 呑海研究室では、図書館を中心とする知識情報基盤に関して研究を行っています。知識情報基盤とは、あらゆる学習・教育・研究に必要な知識や情報を蓄積・共有・活用することによって、知識情報社会を支える社会的基盤です。長い歴史をもつ図書館について、歴史的時間軸および地理的空間軸から、知識情報基盤の社会的役割を探ります。 現在は、溝上研究室と連携しながら、「超高齢社会と図書館」をテーマとして研究しています。日本は、高齢化先進国であるにもかかわらず、高齢者を対象とした図書館サービスも進んでいるとはいいがたいのが現状です。そこで呑海研究室では、超高齢社会における図書館モデルを構築すべく、「認知症にやさしい図書館」や「コミュニティ主導型図書館サービス」などさまざまなアプローチからプロジェクトを展開しています。 最近の卒業研究のテーマとしては、「公共図書館における人型ロボットによる高齢者サービス」「公共図書館の高齢者サービスにおける自分史づくり支援の意義と方法」など「超高齢社会と図書館」に関するもののほか、「移動図書館の役割の再考」や「児童図書館研究会における自動図書館員養成の変遷」などの図書館文化史に関するもの、「高等教育機関における学習支援空間のゾーニング」「英国の大学図書館における学習支援空間:JISC のプロジェクトを中心に」などの大学図書館に関するものなど多岐にわたっています。 卒業研究は、これまで学んだものを基盤として積み上げ、卒業論文という形で表出するという意味で、勉学の集大成であるといえます。能動的に取り組めば取り組むほど、思考力や表現力、コミュニケーション力が培われます。論文執筆に終始するのではなく、卒業研究にとりくむ過程でぜひ多くの力を身につけてください。研究室訪問溝上教授とSporting Memories groupのみなさんと

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