筑波大学2016年スクールガイド
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09■ 研究について教えてください 現在の私の専門分野は、日本アーカイブズ学です。 私はもともと江戸時代の古文書を研究していました。その後、現代の公文書も歴史的に重要な資料であるという意識が社会的に拡がり、公文書の管理や保存についても調査研究を行うようになりました。 2011年の東日本大震災以降、私は被災した古文書や公文書の救出活動に取り組み、茨城文化財・歴史資料救済・保全ネットワーク(茨城史料ネット)の結成に参加して、茨城・福島・栃木の被災地で活動しました。現在は、福島第一原子力発電所事故で避難を余儀なくされている福島県双葉町役場の支援活動に従事し、震災関係資料の保全と調査研究に取り組んでいます。■ 研究室の紹介をお願いします 私のゼミでは、1)日本アーカイブズ学、2)図書館地域資料論、3)日本の地方史・地域史などを主に研究しています。 学生たちは、それぞれ自分の研究テーマを決め、参考文献や研究論文を探して読み込み、どこに研究上の問題点があるかを考えます。その一方で、研究テーマを具体的に掘り下げるための各種調査に取り組みます。文献調査、インタビューなど、調査方法はさまざまです。そして自分たちの研究内容を、定期的にゼミで発表します。お互いに質疑応答を交わすと、思いもかけない発見ができます。 このほか、機会があれば各地の博物館・図書館・文書館の見学会も行っています。もちろん、ときどきみんなで楽しい懇親会もやります。 私のゼミでは、歴史資料の調査合宿を定期的に行っています。被災地で救出・保全された資料の整理作業に参加することもあります。古文書や公文書が保存されている現地へ出かけて行き、直接手にとって取り扱う経験は、何物にも代え難い感動を覚えます。 そのような経験を通じて、過去から伝えられた貴重な文書や記録は、私たちもまた未来へ伝えていかなければならないという使命感を体得してもらいたいと思います。アーカイブズ学とは:文書館で保存利用できる資料とは何か、それらはどのように保存されてきたのか、それらを未来へ保存し、利用するためにどう取り扱えばいいのかなどを実践的に調査研究する日本では新しい学問■ 本学類をめざすみなさんにメッセージをお願いします 「好きこそものの上手なれ」という言葉があります。激動する現代、先のことなど誰にもわかりません。そういうときは、さしあたり自分がおもしろいと思うこと、興味ある物事に取り組むといいでしょう。その時に大事なのは、できるだけ広い視野で考え、知識を得ることです。知識情報・図書館学類は、そうしたみなさんの知的好奇心を満たしてくれる場所だと確信します。東日本大震災による津波被災資料の保全調査(茨城県鹿嶋市 2011年)福島県双葉町役場が保有した震災関係資料の保全と調査研究    (2013年 筑波大学広報室提供)歴史資料調査合宿(埼玉県飯能市 2010年)

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