筑波大学2017年スクールガイド
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07照山 絢子 助教(知識科学主専攻) レポートを書くために調べ物をする、娯楽のために本や漫画を読む、うれしかったことや悲しかったことを友達にメールする…。多くの人は情報を獲得したり共有したりするためのコミュニケーションを、意識せずにとっています。しかし、そういったことに困難を感じる人もいます。たとえば、視覚障害で文字を読むのに特別な機材が必要な人や、自閉症で人とうまく気持ちを共有できない人、日本語が母語ではないため生活に必要な情報を得られない人等。また、障害や言葉の壁がなくとも、地域や世代、育った環境の違いなどによってコミュニケーションのスタイルはさまざまです。人がどんなふうに情報をやりとりし、他人や社会とつながっているのか、またそれについてどんなことを思い、どんな問題を抱えているのかを明らかにすることは、より良い社会の実現のために必要不可欠なことです。 照山研究室では、学生がそれぞれ自分で決めた場所や地域に出かけていき、そこの人々に時間をかけて寄り添い話を聞くことで、その人々の経験にせまる「フィールドワーク」という調査をおこなっています。学習障害者のグループに出かけていって彼らの読書経験について調査をした学生、商店街の活性化に奮闘する地域で住民たちと時間を過ごした学生、不登校の子どもたちが通う適応指導教室の先生たちの話を聞きにいこうとしている学生など、さまざまな卒業研究に取り組んでいる学生がいます。現場に赴き、そこで暮らす人々の生の声に耳を傾けることで、そこにどんなコミュニケーションが生じていてどんな課題が浮かび上がっているのかを考えていきます。一人で調査をするというのは最初は不安かもしれませんが、ゼミ合宿で聞き取り調査をする等、練習の場も多く設けています。フットワークの軽さと知的好奇心があれば、かけがえのない出会いと学びの経験が得られるものと思います。手塚 太郎 准教授(知識情報システム主専攻) 人類が現在のような繁栄を手にすることができたのは、経験のなかから知識を獲得し、体系化する能力によってではないでしょうか。この能力の本質を明らかにすることで、コンピュータにも人間と同じようにデータから知識を獲得する力を与え、さらなる進歩を実現しようとする研究が活発に行われています。手塚研究室では確率論や統計学に基づきデータから有益なパターンを発見し、構造化された知識を得ていくプログラムの開発を行っています。 インターネットやセンサーネットワークをはじめとして、膨大な量の電子的なデータが蓄積されている現在、これらの手法には幅広い応用があります。文書や画像、時系列データなどに対し、グラフィカルモデルやニューラルネットワークなど、データの特性にあわせたモデルを構築し、学習手法の実現に取り組んでいます。 研究室では毎週、輪講やゼミを行っています。輪講では基礎的な技術に関するテキストを用いて学生が順に発表し、理解を深めています。ゼミでは各自の研究に関してディスカッションを行い、問題の解決に向けての検討を行っています。夏休みの旅行やスポーツイベント、鍋などを通して研究室内での親睦を深めるようにもしています。データを解析する力、問題について深く考え、解決を模索する力は実社会に出ても必ず役に立つと思います。意欲を持った学生がメンバーとして加わってくれることを心待ちにしています。 吉田 右子 教授(情報資源経営主専攻) 公共図書館は地域住民の生涯学習を支えるコミュニティ・メディアです。情報や学習にかかわる機関は他にもたくさんありますが、あらゆるメディアに含まれる情報の収集・提供・保存を行い、体系的に組織化された情報が司書という情報専門職によって提供される点で、公共図書館はとてもユニークな文化施設です。 しかしこうした公共図書館のもつパワーが十分に利用者に伝わっていないのではないかという問題意識から、吉田研究室では図書館が地域にとけ込み、住民が積極的に図書館サービスを利用している北アメリカやスカンディナヴィア地域の公共図書館を対象に研究を行ってきました。最近では社会的・経済的に困難な状況にある人びとに、さまざまなメディアを通じて文化を手渡すための活動を続けている途上国の図書館を研究対象にする学生も増えてきました。 これまでの卒業研究のテーマは「アメリカ・カナダの公共図書館におけるセクシュアルマイノリティに対するサービス」、「北欧の公共図書館におけるIT利用支援サービス」、「アメリカにおける公共図書館と博物館の連携型生涯学習プログラム」、「アメリカにおける文化の多様性と公共図書館コレクション」、「ネパールにおけるNGOによる図書館設置支援の現状と課題」、「東南アジア諸国のコミュニティ学習センターにおける図書館の役割」などです。 海外での調査を自力で終えて帰ってきた研究室の学生は、いつも驚くほどたくましくなっています。ぜひ一緒に公共図書館を再発見しましょう!研究室訪問スウェーデン ホーグ・ダーレン図書館デンマーク ルングビュー図書館

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