筑波大学2016年スクールガイド
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07横山 幹子 准教授(知識科学主専攻) 私たちはさまざまな知識を共有しながら、日々の生活を営んでいます。たとえば、「学校の裏のアイスクリーム屋のアイスクリームがおいしいこと」、「隣の家の猫が三毛猫であること」、「雪道が滑るということ」・・・。そしてそのような知識を共有することで、さまざまな行動を起こしたりします。たとえば、「学校の裏のアイスクリーム屋のアイスクリームがおいしい」という知識を共有する友人同士が、その店にアイスクリームを食べに行ったりします。「雪道が滑る」という知識を共有しているために、注意深く歩いたりします。その意味では、知識を共有することは、人間が社会の中でよりよく生活していくためには、不可欠なことだと考えられます。 では、共有されると言われる「知識」とはどのようなものなのでしょうか。そして、知識をどのようなものと考えたら、知識を共有することができるのでしょうか。知識を巡るそのような問題を解決しようとしてきた学問のひとつが、哲学であり、特に哲学の中でも、認識論(知識論)と呼ばれる分野です。 横山研究室では、哲学的視点から、知識を巡るさまざまな問題を考えることをめざしています。学生は、「知っているとはどういうことか」から始まり、知識の本質、知識の限界、知識の確実性、知識の共有等々さまざまな問題に取り組んでいます。これまでの卒業研究には、知識は個人の心のなかにあるのか、それとも社会の中にあるのかについて考察したもの、言語という記号で表現されるものと絵画という記号で表現されるものの違いについて考察したもの、コンピュータの理解と人間の理解の違いについて考察したもの等、さまざまなものがあります。 文献研究が中心になりますが、ゼミでの発表や討論を通じて、論理的思考力、発想力、コミュニケーション力を鍛え、批判的に考えることのできる人になってもらえたら嬉しいと思っています。手塚 太郎 准教授(知識情報システム主専攻) 人類が現在のような繁栄を手にすることができたのは、経験のなかから知識を獲得し、体系化する能力によってではないでしょうか。この能力の本質を明らかにすることで、コンピュータにも人間と同じようにデータから知識を獲得する力を与え、さらなる進歩を実現しようとする研究が活発に行われています。手塚研究室では確率論や統計学に基づきデータから有益なパターンを発見し、構造化された知識を得ていくプログラムの開発を行っています。 インターネットやセンサーネットワークをはじめとして、膨大な量の電子的なデータが蓄積されている現在、これらの手法には幅広い応用があります。文書や画像、時系列データなどに対し、グラフィカルモデルやニューラルネットワークなど、データの特性にあわせたモデルを構築し、学習手法の実現に取り組んでいます。 研究室では毎週、輪講やゼミを行っています。輪講では基礎的な技術に関するテキストを用いて学生が順に発表し、理解を深めています。ゼミでは各自の研究に関してディスカッションを行い、問題の解決に向けての検討を行っています。夏休みの旅行やスポーツイベント、鍋などを通して研究室内での親睦を深めるようにもしています。データを解析する力、問題について深く考え、解決を模索する力は実社会に出ても必ず役に立つと思います。意欲を持った学生がメンバーとして加わってくれることを心待ちにしています。 吉田 右子 教授(情報資源経営主専攻) 公共図書館は地域住民の生涯学習を支えるコミュニティ・メディアです。情報や学習にかかわる機関は他にもたくさんありますが、あらゆるメディアに含まれる情報の収集・提供・保存を行い、体系的に組織化された情報が司書という情報専門職によって提供される点で、公共図書館はとてもユニークな文化施設です。 しかしこうした公共図書館のもつパワーが十分に利用者に伝わっていないのではないかという問題意識から、吉田研究室では図書館が地域にとけ込み、住民が積極的に図書館サービスを利用している北アメリカやスカンディナヴィア地域の公共図書館を対象に研究を行ってきました。最近では社会的・経済的に困難な状況にある人びとに、さまざまなメディアを通じて文化を手渡すための活動を続けている途上国の図書館を研究対象にする学生も増えてきました。 これまでの研究室の卒業研究のテーマは「アメリカの公共図書館における<遮断された人々>に対するサービスについて」、「フィンランドにおける公共図書館の役割―ヘルシンキ市立図書館の取り組みを中心として」、「スウェーデンにおける移民・難民への図書館サービスについて」、「日本のNGOによる開発途上国への図書館支援について―公益社団法人シャンティ国際ボランティア会の取り組みに着目して」、「ネパールにおけるNGOによる図書館設置活動の現状と課題」などです。 海外での調査を自力で終えて帰ってきた研究室の学生は、いつも驚くほどたくましくなっています。ぜひ一緒に公共図書館を再発見しましょう!研究室訪問スウェーデン ホーグ・ダーレン図書館デンマーク ルングビュー図書館

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